桜散る、春の大山崎山荘美術館。

4月初め、またしても緊張感漂う日々へ差し掛かってきた頃、
この春こそは訪れたいと思っていた大山崎山荘美術館へ。




大阪市内から電車で1時間ほど。
駅を出て歩く道すがら、
流れる空気のゆるやかさに、一気に肩の力が抜けてゆく。

山道を進む中、
ふと見上げたわたしの視界にひろがる、吸い込まれそうなほど みずみずしい緑。

歩みを進めてゆくと、
どこからか、
はらり はらり と、桜の花弁が舞い落ちてくる。

竹や木々の緑の中に、枝垂桜が凛と佇んでいる姿を目にした瞬間、
カチッと日常から非日常へ心の針が傾いた。


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平日の朝ということもあり、
さほど人も多くないのは、この状況下では有難い。

もう何度も訪れている場所だから、
順路を無視して私は展示室へ向かう前に、
階段を上がり喫茶室へ入る。

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昨年はこの喫茶室が当面のあいだ休業となっており、
この日を待ちかねていた、というのもあるけれど、
テラス席からの眺めを独り占めできるのも、
この時間ならではの贅沢かもしれない。

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珈琲を頂いていると、
というか、この山荘に来てからというもの、
建物の外では鶯の声が響き渡っていて、なんとも春らしい。

絵を、描かない日々が始まって一月余り、
視覚にばかり頼っていたツケなのか、
妙に耳に入る「音」であったり、
目以外の感覚が研ぎ澄まされたように思う。


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肝心の展示はというと、
開館25周年記念 夢をめぐる―絵画の名品より」と称され、
作品をとりまく「夢」に焦点があてられた美術館の所蔵作品が公開されている。

中でも、モネの連作《睡蓮》など代表作があつめられた[地中館]で、
私はとても特別な時間を過ごせたように思う。

普段からこの地中館にはモネの睡蓮が常設されているのだけれど、
今回は他の芸術家の作品が無く、半月形の空間にぐるりとモネの作品が並んでいる。

展示室の真ん中にある椅子に腰かけて、
ゆっくりと身体を回転させ、時間をかけて一つ一つの絵と向き合ってゆくと、
100年前にモネが過ごしたジヴェルニーの空気と、繋がれたような気がした。


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庭園の桜は、もう見ごろは過ぎていたものの、
ゆっくり、ゆっくりと散ってゆく様を眺めているのは心地よかった。

近所で見かけた満開の桜には、なんだか圧倒されてしまって、
今の私にはこの大山崎の桜の方が、
「急がなくてもいいのよ」と
言って貰えているようで、しっくりくる。


こうして先日のことを振り返りながらふと思うことがある。

たとえば友人に贈った自身の小作品が、
100年後に、友人のひ孫なのか、はたまた知らない誰かの手なのか、
分からないけれど奇跡的に残っていたとして、
私の名前すら分からない状態だったとしても、

その絵が、
その人の心をほんの少しでも助けるものであれたなら、
この上なく嬉しい。



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